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モータの性能線図とT-N特性図の見方を解説

モータを扱い始めたばかりの技術者の皆様の中には、性能線図に苦労してる方も多いのではないでしょうか。モータの性能を最大限に活かすためには、性能線図を正確に読み取ることが重要です。一見難しそうに見えるかもしれませんが、基本を押さえればモータの性質を正確に理解できるため、モータを選定する際に非常に役立ちます。


そこで本記事では、モータの性能線図とともに、性能線図と併せて記載されることの多いT-N特性図(トルクカーブ)の基本的な見方をお伝えします。



モータの性能線図の見方

性能線図サンプル

モータの性能線図は、トルク基準方式で表されることが多く、トルクを基準として回転数・電流・出力・効率を読み取ることができます。トルクとは、モータの回転力のことで、単位はNm(ニュートン・メートル)が用いられ、上の性能線図サンプルのように、mNm(ミリ・ニュートン・メートル)で表されることもあります。横軸にトルク、縦軸に回転数と電流値が表記され、それぞれの数値の関係性を示しています。


ここからは、性能線図における各線について解説していきます。


回転-トルク線 ※性能線図サンプルの青色実線

回転とトルクの関係を表した線で、T-Nカーブと呼ばれることもあります。回転数とトルクは反比例の関係のため、右肩下がりの直線となります。この線からは、モータが出せる最大回転数と最大トルクが読み取ることができます。


無負荷回転数[N0]とは、その名の通り負荷が無い状態、すなわちトルクが0の状態における最大回転数を表しています。拘束トルク[Ts]とは、拘束(Stall)時のトルクのことで、モータの負荷を増加させて回転が停止した時のトルク、つまりモータが出せる最大トルクを表しています。


電流線 ※性能線図サンプルのオレンジ色実線

無負荷状態から拘束状態までのモータに流れる電流を表した線で、T-Iカーブと呼ばれることもあります。無負荷電流[I0]とは、負荷が無い状態での電流値のことです。


理論上は負荷が無ければ電流も0となりますが、実際は鉄損や摩擦によって微弱な電流が流れるため、性能線図では0よりもわずかに大きな値となります。拘束電流[Is]とは、拘束時、すなわちモータの回転が停止した時の電流値を指します。


出力線 ※性能線図サンプルの黒色破線

出力[W]は、トルクと回転数の積で表されます。通常、無負荷回転数の半分の回転数の時に出力は最大化します。出力が最大化するポイントを「瞬時最大出力」と呼びますが、そのモータが連続的に安定して発揮できる出力の最大値である「定格出力」とは異なるため、注意が必要です。


また、定格出力時のトルク値を「定格トルク」、回転数を「定格回転数」と呼びます。これらの数値は通常、モータの性能表に記載されていますので、性能線図と併せて確認するようにしましょう。


効率線 ※性能線図サンプルの黒色実線

出力を電圧で割った値が、効率[%]です。モータが消費する電力に対して、最も効率が良くなるポイントを「最大効率」と呼びます。


なお、こちらの性能線図サンプルは、図の右上に記載されている通り、印加電圧12Vのものです。電圧が変わると性能線図も変化するため、「使いたい電圧」と「見ている性能線図」にズレがないよう注意しましょう。



モータのT-N特性図(トルクカーブ)の見方

T-N特性図サンプル

モータの性能を表す図として、性能線図と併せて用いられることが多いのがT-N特性図です。この図は流した電流値に対して、モータが発揮できるトルクと回転数の関係を表したものであり、トルクカーブとも呼ばれます。


例えば、上記T-N特性図サンプルのように、電圧4V、電流0.3AでモータYを動かした場合は、次の手順でトルクと回転数を読み取ることができます。


▼上記図におけるトルクと回転数の読み取り方

  1. 電流線上の0.3Aの点を見つける
  2. 上記の点における横軸のトルクの値を見ると、5mNmの負荷がかかっていることがわかる
  3. 縦軸の回転-トルク線上で、上記トルク値5mNmにおける回転数を見ると、約350rpmで回転することがわかる



モータの駆動電圧を変える場合のT-N特性図の変化

T-N特性図サンプル(電圧変化)

モータの駆動電圧が変化すると、T-N特性図も変化します。モータの出力(トルク×回転数)は、電圧に比例して大きくなるため、電圧が上昇すると回転₋トルク線はそのまま上に平行移動するわけです。例えば上記図で4Vを基準にして考えると、電圧が6Vの場合は上に、2Vの場合は下に回転₋トルク線が移動します。


T-N特性図の見方を理解できれば、「必要な出力を満たすためには、どれぐらいの電圧・電流でモータを動かせばよいのか」がわかるようになります。



性能線図、T-N特性図を用いたモータの選定方法

性能線図とT-N特性図の見方で解説したように、モータのトルクと回転数は、供給電源の電圧と電流によって変化します。自社で扱う供給電源の値、つまり電圧や電力が分かれば、その電源でモータを駆動させた時の推測トルクと推定回転数も明らかになります。


モータを選定する際は、使用する電源の値を想定した上で、各メーカーが公表しているモータの性能を確認し、要求されるスペックを満たせるものを選んでください。



モータの選定で見落とされがちなポイント

モータを選定する際、定格トルクや定格回転数といった、モータが安定して出力できる最大数をもとに選びがちですが、モータ始動時のトルク、すなわち最大トルクである拘束トルク[Ts]が十分に確保できているのかを考慮することも非常に大切です。


始動時のトルク(Ts)が不十分だと、機器の立ち上がりが遅くなり、産業分野で利用する場合に作業効率が低下する恐れがあります。そのため、定格トルクや定格回転数と同様に、拘束トルクもモータの特性表でしっかりと確認しておきたい項目の一つだといえます。


また、モータの性能線図やT-N特性図は、一般的には横軸にトルク、縦軸に電流値と回転数が記載されますが、 縦軸と横軸が逆になっているケースもあるため、見間違えないように注意してください。



まとめ

この記事では、モータの性能線図とT-N特性図の見方について、以下をお伝えしました。


  • モータの性能線図の見方
  • モータのT-N特性図(トルクカーブ)の見方
  • モータの駆動電圧を変える場合のT-N特性図の変化
  • 性能線図、T-N特性図を用いたモータの選定方法
  • モータの選定で見落とされがちなポイント


モータを販売する各メーカーでは、モータの性能線図やT-N特性図を公表しているため、正しい見方を身につけておけば選定の際に役立ちます。


また、自社の供給電源を確認し、特性図を用いて推定トルクと推定回転数を明らかにすれば、より正確な選定ができます。加えて、モータを選ぶ際は、拘束トルクにも考慮することで、機器の立ち上がり不良を未然に低下を防ぐことができます。


マブチモーターでは、多種多様な小型モータを製造・販売しています。ホームページやカタログにて、製品ごとに性能表と特徴を掲載しておりますので、モータの購入を検討されている技術者や開発者の方は、是非一度ご覧ください。


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