
スロットレスモータとスロット付モータの特長を比較解説!
この記事では、スロットレスモータとスロット付モータの特長について比較解説します。
それぞれの構造やメリットを理解することで、ぜひモータ選定にお役立てください。
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スロットレスモータとスロット付モータの構造を比較
一般的なDCモータの場合、ロータもしくはステータにスロット(溝)とティースが設けられており、スロットに銅線が巻かれています。一方でスロットレスモータにはスロットとティースが無く、巻かれた銅線が樹脂などで固定されています。
図1:スロットレスモータ(左)とスロット付モータ(右)の構造の違い
上の図は、スロットレスモータとスロット付モータの構造の違いを示しています(どちらもインナーロータタイプのブラシレスモータ)。スロット付モータと比較すると、スロットレスモータの銅線は滑らかで均一に巻かれていることがわかります。
永久磁石の磁場と、コイルに発生した磁場の相互作用で回転を生み出すという意味では、スロットレスモータとスロット付モータの基本的な動作メカニズムは同じですが、巻線部の違いにより性能に違いが生まれています。それぞれの特長については、次の章で詳しく解説します。
スロットレスモータとスロット付モータの特長を比較
前述の通り、スロットレスモータとスロット付モータの基本的な違いはその設計にあり、それぞれの設計の違いがモータの電気的・機械的パラメータ、性能特性に影響を与えます。この章ではそれぞれのモータの特長を比較し、適切な用途についても解説していきます。
スロットレスモータの特長
静音・低振動
スロット付モータの場合、ティース部分に凹凸があり、磁石とティースの間で引き付ける力に濃淡(強弱)が発生するため、回転によってトルクの脈動となるコギングトルクが発生します。
スロットレスモータの場合は、ティースが無く、モータの鉄部分が平滑なため、コギングトルクがほぼゼロに抑えられ、駆動時の騒音や振動を低減しています。
高効率
モータは磁束が変化する際に、鉄心部分で鉄損が生じます。鉄損は渦電流損*1とヒステリシス損*2の合計値であり、回転速度と磁束変化が大きくなるほど、鉄損も大きくなります。
*1 渦電流損:電気エネルギーが熱エネルギーとして消費される損失
*2 ヒステリシス損:磁気エネルギーが熱エネルギーとして消費される損失
スロットレスモータはティースが無い分、スロット付モータに比べて鉄損を小さく抑えられるため、高速回転時でも高効率で駆動することができ、省エネ性に優れています。
小径化が容易
スロット付モータの場合、スロットに沿って銅線を巻く必要があるため凹凸が発生し、肉厚になりやすい構造になっています。一方でスロットレスモータの場合は、平滑面にコイルを配置するため、凹凸が発生しにくく、小径化を実現しやすい構造になっています。
スロット付モータの特長
高トルク密度
同サイズのモータで比べた場合、スロット付モータはティースがある分、スロットレスモータよりも銅線を長く巻くことができるため、コイルから大きな磁束を得ることができます。それに伴いトルク密度が高くなり、大きなトルクを発揮することが可能です。
熱管理
ティースやスロットから熱伝導により熱を逃がすことができるため、連続使用時も熱管理がしやすいのが特長です。スロットレス設計では、負荷とパッケージに応じて追加の冷却が必要になる場合があります。
低コスト
同じ出力帯のモータで比較すると、スロット付モータの方が低コストで製造可能です。スロットレスモータの場合、電線をティースに巻き付けない構造のため、コイル部分の作成や結合に工数がかかり、製造コストが高くなる傾向があります。
また、前述の通りスロット付モータの方がトルク密度を高めやすいため、同じステータサイズのスロットレスモータで同等のトルクを得るには、より強力な磁石を使用する必要があります。それに加えて、ハウジングやエンドベルにも高精度なものが求められるため、これもスロットレスモータのコストが上がる要因となっています。
比較表
比較基準 | スロットレスモータ | スロット付モータ |
コギングトルク | コギングトルクが発生しにくい | コギングトルクが発生しやすい |
効率性 | 鉄損が発生しにくい | 鉄損が発生しやすい |
小径化 | 小径化しやすい | 小径化しにくい |
トルク密度 | トルク密度を高めにくい | トルク密度を高めやすい |
熱管理 | モータ単体では熱管理がしにくい(外部の追加冷却が必要になることが多い) | モータ単体で熱管理がしやすい |
製造コスト | 高め | 安め |
用途
スロットレスモータは駆動の滑らかさや静音性が特長であり、歯科治療用ハンドピースや外科手術用パワーツールといった医療機器や、精密な動作制御が要求されるロボットの小型アクチュエータやジョイント等で使用されています。
スロット付モータは、比較的低コストで高出力化がしやすく、FA(ファクトリーオートメーション)・産業機械や家電製品などで広く使用されています。
マブチモーターの高速回転ブラシレスモータ

図3:マブチモーターのスロットレスモータ(左)とスロット付モータ(右)
マブチモーターでは、主に医療機器向けに「スロットレス」、「スロット付」の高速回転ブラシレスモータをそれぞれラインナップしております。
マブチモーターのスロットレス高速回転ブラシレスモータは、高速回転時における静音性と低振動はもちろん、特許取得済みの独自のコイル設計により高いトルク密度を実現しています。歯科治療用ハンドピースや外科手術用パワーツール、各種人工呼吸器など、幅広い医療機器用途にソリューション提案が可能です。
在宅医療機器向けにリーズナブルなスロット付タイプもご用意しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください
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まとめ
スロットレスモータもスロット付モータも基本的な動作原理は同じですが、巻線部の違いにより性能に違いが生まれています。スロットレスモータは比較的高価で高トルク化がしづらいという面はありますが、静音・低振動、高効率、小径化が容易といった長所があります。一方でスロット付モータは、スロットレスモータよりもコギングトルクが大きくなるものの、コストや高トルク化の面ではアドバンテージがあります。
それぞれのモータの特長を理解し、搭載する製品に要求される性能や製造コストに応じて、適切なモータを選べるようにしましょう。


