ブラシレスDCモータとは? ブラシ付DCモータとの違いと種類を解説
ひとくちにモータといっても様々な製品があり、利用するシーンによって最適なモータは異なります。
モータの種類の1つに“DCモータ”があり、“ブラシ付DCモータ”とも呼ばれています。モータ内部に電流を流すための電極をブラシと呼び、ブラシが付いていることで寿命や回転のパワーなどに課題がありますが、低コストというメリットも挙げられます。また、寿命や回転のパワーなどの改善策として、“ブラシレスDCモータ”が登場しています。
ブラシレスDCモータは、電気器具や駆動系ロボット、パーソナルモビリティ、医療機器など、様々な分野で活用されています。しかし、「ブラシレスDCモータについてよく知らない」「ブラシ付DCモータとの違いが分からない」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ブラシレスDCモータの概要やブラシ付DCモータとの違い、種類を解説します。
contents[非表示]
- 1.モータの仕組み
- 2.DCモータの仕組み
- 3.ブラシレスDCモータとは
- 4.ブラシ付DCモータとの違い
- 5.ブラシレスDCモータの種類
- 5.1.表面磁石型(アウターロータ型)
- 5.2.埋込磁石型(インナーロータ型)
- 6.ブラシレスDCモータのセンサーの種類
- 7.まとめ
モータの仕組み
モータとは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する装置です。
モータは、向かい合う永久磁石のN極からS極に流れている磁束の集まりによって磁界が発生し、その間でコイル(導体)に電流を流すことで電磁力が発生する仕組みです。
▼電磁力が発生する原理
DCモータの仕組み
DCモータ(以下、ブラシ付DCモータ)は、回転子であるコイルに直流電源を流して動く仕組みです。
▼回転する仕組み
コイルの先端に付いている整流子(※)とブラシが接触することによって電流をコントロールし、回転を制御します。
※整流子とは、コイルに流れる電流の向きを変える部品のこと。コミュテーター、またはコミテーターとも呼ばれている。
ブラシレスDCモータとは
ブラシレスDCモータは、ブラシ付DCモータにあった整流子とブラシがなく、代わりに永久磁石が回転子(ロータ)として動きます。整流子とブラシの接触ではなく、電子回路を用いて電流の制御を行いながら回転する仕組みです。
ブラシ付DCモータは、モータのなかでも扱いやすいというメリットがある一方で、整流子にブラシが接触し続けることで、摩耗しやすくなるという課題がありました。
この課題を改善できるのが、ブラシレスDCモータです。ブラシを用いないため、整流子が摩耗するというデメリットもなく、長く使えるという点が大きな特長です。
ブラシレスDCモータのメリットや用途については、こちらの記事をご覧ください。
ブラシ付DCモータとの違い
ブラシレスDCモータとブラシ付DCモータは、整流子とブラシの有無以外にも違いがあります。ここでは、両者の4つの違いを紹介します。
項目 |
ブラシ付DCモータ |
ブラシレスDCモータ |
放熱性 |
低い |
高い |
寿命 |
比較的短い ※マブチモーターの製品は交換を必要としない寿命を達成 |
ブラシ付DCモータより長い |
ハイパワー化 |
実現が難しい |
実現しやすい |
省エネルギー性能 |
優れている |
ブラシ付DCモータより優れている |
①放熱性
ブラシレスDCモータは、ブラシ付DCモータよりも放熱性が高いため、継続して稼働しても性能が低下しにくく、比較的安定したパフォーマンスを発揮します。
モータに電流が通ると熱が発生します。ブラシ付DCモータには、コイルとモータケースのあいだに空気層があるため、発生した熱が外に放出されにくい構造です。モータ内部の温度が上がることでコイルに電流が流れにくくなり、次第に回転速度が低下してしまいます。
一方ブラシレスDCモータは、コイルとモータケースが密着しており、空気層ができにくいため、コイルから発生した熱を効率的に放出できます。
②寿命
ブラシの有無により、モータの寿命も異なります。
ブラシが付いていると回転によって整流子が摩耗するのに対して、ブラシレスであれば整流子の摩擦がなく、部品の破損を防止できます。
そのため、ブラシ付DCモータは、ブラシによって摩耗してしまい、定期的なメンテナンス、もしくはモータの交換が必要です。しかし、ブラシレスDCモータは摩擦がないことで、比較的長く使い続けられます。
なお、マブチモーターのブラシ付DCモータを搭載している用途においては、メンテナンス・交換を前提としない寿命を達成しています。ブラシレスDCモータ同様、長期的な利用が可能です。
③ハイパワー化
ブラシ付DCモータと比較すると、ブラシレスDCモータは大電流を流せるため、回転のパワーにも違いが見られます。
ブラシ付DCモータに大電流を流すと、整流子とブラシの接点が溶けて故障するおそれがあります。そのため、ハイパワー化の実現が難しいといえます。
ブラシレスDCモータの場合は、ブラシが付いていないため、接点が溶けるリスクもありません。大電流を流してハイパワー化を実現しやすい点が特長です。
④省エネルギー性能
ブラシレスDCモータは、ブラシ付DCモータよりも高い省エネルギー性能を誇ります。ブラシレスDCモータのほうが回転効率が高く、消費電力も少ないという理由です。
また、前述のとおり、ブラシレスDCモータは整流子とブラシの摩耗がないため、メンテナンス・交換を頻繁に行う必要がありません。資源の消費を抑えられるという点においても省エネルギー性能に優れているといえます。
ただし、マブチモーターのブラシ付DCモータは、一般的な製品と異なり、小型・高出力でエネルギー変換効率に優れているという特長があります。
ブラシレスDCモータの種類
ブラシレスDCモータは、回転子の構造によって2種類に分けられます。
表面磁石型(アウターロータ型)
回転子の外周に永久磁石が貼り付けられているタイプを“表面磁石型”、あるいはSPM(Surface Permanent Magnet)モータと呼びます。
表面磁石型は、回転子とコイルの電磁力による回転(マグネットトルク)のみで動きます。埋込磁石型と比べると回転効率の低さや遠心力による磁石の剥がれなどに課題がありますが、小型化しやすいというメリットがあります。
埋込磁石型(インナーロータ型)
回転子の内部に永久磁石が埋め込まれているタイプが“埋込磁石型”です。IPM(Interior Permanent Magnet)モータとも呼ばれます。
埋込磁石型のブラシレスDCモータは、マグネットトルクに加え、磁気の抵抗によって生じるリラクタンストルクも利用して動くため、表面磁石型よりも効率的に回転する点がメリットです。
ブラシレスDCモータのセンサーの種類
ブラシレスDCモータの回転を制御するセンサーには、エンコーダ仕様とホールIC仕様、レゾルバ仕様の3種類があります。
エンコーダ仕様
エンコーダ仕様は、モータに内臓された光学式のエンコーダによって、回転量や回転角度などの情報を検知しています。
ホールICと併用することで、高い精度で動作を制御することができます。工場の組み立てロボットや無人搬送機などの産業用ロボットに多く搭載されています。
ホールIC仕様
ホールIC仕様は、レゾルバ仕様よりも小型という点が特長です。
ホールICはホール素子とも呼ばれ、モータの回転位置をより正確に検出する役割を担っています。
『マブチモーター』の製品では、ISシリーズが該当します。民生機器から産業機器まで幅広い用途での活用が可能です。
レゾルバ仕様
レゾルバ仕様は、ホールIC仕様よりも停止精度が高く、回転ムラの少ない速度制御が可能です。また、熱・油・埃・振動などの外部要因に強いという特長もあります。劣悪な環境でも使用できる点はホールIC仕様より優れています。
マブチモーターの製品では、IRシリーズが該当しており、倉庫や工場内で使うAGVや、AMRへの活用に適しています。
さらに、マブチモーターでは幅広い用途でご活用いただけるブラシレスDCモータを取り扱っています。ラインナップはこちらの資料でご覧ください。
まとめ
この記事では、ブラシレスDCモータについて以下の内容を解説しました。
- モータ・DCモータの仕組み
- ブラシレスDCモータの概要
- ブラシ付DCモータとの違い
- ブラシレスDCモータの種類(回転子の構造・センサー)
ブラシレスDCモータは、従来のDCモータにあった摩耗による寿命の課題を克服した新しいモータです。寿命だけでなく、放熱性やハイパワー化、省エネルギー性にも優れているため、様々な分野・製品への活用が期待されています。
『マブチモーター』は、ブラシレスDCモータの開発に力を入れており、“小型・軽量・高効率”を基盤としつつ、“防水、高速回転、静音性など各用途で必要とされる要素”を組み込んだ製品ラインナップを取り揃えております。
また、全世界に販売網を有しており、ご希望の製品を短納期でお届けすることが可能です。また、サンプルのご要望や使用方法のご確認など、製品の選定からご購入後まで一貫したサポートを行っております。「自社製品に最適なモータが分からない」「リーズナブルなモータを探している」など、お困りの方はお気軽にご相談ください。
オンラインショップもございますので、こちらから製品の購入も可能です。