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ステッピングモータとは?動作原理、種類、用途を解説

ステッピングモータとは、入力される電気信号(パルス)に応じて一定の角度ずつ回転するモータです。センサによるフィードバックを必要としないオープンループ制御が可能で、比較的シンプルな制御システムで正確な位置決めを実現できます。位置決めや一定角度での回転制御が求められる用途に適しており、製造装置、医療機器、ロボティクスなど幅広い分野で使用されています。

ステッピングモータの動作原理

ステッピングモータは、駆動回路(ドライバ)がステータコイルに順番に電流を流すこと(順次励磁)によって、入力されたパルス信号を回転運動に変換します。この1ステップごとの動作を繰り返すことで、ロータは一定角度ずつ回転します。

  1. コイル励磁 ドライバが1つまたは複数のステータコイルに電流を送り、磁場を生成します。
  2. 磁気整列 永久磁石または鉄歯を持つロータは、発生した磁場に引き寄せられ、磁力が最も安定する位置に整列します。
  3. 順次切替 ドライバは現在通電しているコイルへの電流を切り、次のコイルへ通電することで、新たな位置に磁場を形成します。
  4. 段階的回転 ロータは新たに形成された磁場に整列するため、1ステップ角分だけ回転します。この動作を繰り返すことで、連続したステップ回転運動が生み出されます。

ステッピングモータの主な特長

正確な位置決め性能入力パルス数によって回転数を制御できるため、正確な位置決めが可能です。

オープンループ制御が可能エンコーダなどのフィードバックセンサを必要とせず、比較的シンプルなシステムで位置や速度を制御できます。

ステッピングモータを理解するうえで重要なのが、「ステップ角」と「制御方式」です。これらについて理解することで、動作原理や特長をより深く理解できます。

ステップ角

ステップ角とは、1回のパルス入力に対してロータが回転する角度のことです。また、モータを1回転(360°)させるために必要なステップ数分解能と呼びます。

例えば、ステップ角が1.8°のモータは、1回転に200ステップを要するため、分解能は200(360° ÷ 1.8° = 200)となります。

分解能の大小は、モータの性能やコスト、適した用途に大きく影響します。

低分解能のモータ(例:7.5°)

構造が比較的シンプルなため、コストを抑えやすいのが特長です。エアコンのルーバーや監視カメラなど、高い位置決め精度を必要としない用途で使用されています。

高分解能のモータ(例:1.8°や0.9°)

低分解能タイプと比較して高価になる傾向がありますが、より細かな位置決めが可能です。3Dプリンタ、医療機器、半導体製造装置など、高い位置決め精度が求められる用途で使用されています。

モータのステップ角は、ロータやステータの物理的な構造によって決まるため、製造後に変更することはできません。一方で、マイクロステップ駆動(後述)を用いることで、1ステップをさらに細かく分割し、より滑らかな回転や高精度な位置決めを実現できます。

オープンループ制御とクローズドループ制御

多くのステッピングモータは、センサによるフィードバックを必要としないオープンループ制御で動作します。オープンループ制御とは、ドライバから出力されるパルス信号に従ってモータを回転させる制御方式です。比較的低コストでシンプルなシステムを構築できる一方、指令位置と実際の位置にズレが生じても、そのズレを検知して補正することはできません。

そのため、モータの許容トルクを超える負荷が加わった場合や、急加速・急減速を行った場合には、脱調が発生することがあります。脱調とは、入力されたパルス信号に対してモータの回転が追従できなくなり、指令位置と実際の位置にズレが生じる現象のことです。

一方、わずかな位置ズレも許容されない用途では、エンコーダなどのセンサを用いたクローズドループ制御が採用されます。クローズドループ制御では、モータの位置情報を常時フィードバックしながら制御を行うため、位置誤差が発生しても補正することができます。その結果、高い信頼性と高精度な位置決めを実現できます。

ステッピングモータの種類

ステッピングモータは、構造の違いによって主に3種類に分類されます。それぞれに特長があり、求められる分解能やトルク、コストに応じて適切なタイプを選定することが重要です。

永久磁石(PM)型ステッピングモータ

PM型(Permanent Magnet)は、ロータに永久磁石を使用したステッピングモータです。ロータの永久磁石がステータコイルによって発生する磁界に引き寄せられることで回転するため、比較的大きなトルクを生み出せるのが特長です。

また、構造がシンプルなため製造コストを抑えやすく、プリンタやスキャナ、ゲーム機などの民生機器で広く使用されています。

一方で、ロータの磁極数に制約があるため、ステップ角は一般的に7.5°~15°程度と大きくなります。そのため、ハイブリッド型ほど高い分解能は得られませんが、高精度な位置決めを必要としない用途では十分な性能を発揮します。

可変リラクタンス(VR)型ステッピングモータ

VR型(Variable Reluctance)は、ロータに永久磁石ではなく歯車状の鉄心を使用したステッピングモータです。ロータとステータの歯を細かく設計することでステップ角を小さくできるため、比較的高い分解能を実現しやすいのが特長です。また、ロータに永久磁石を使用しないため慣性モーメントが小さく、優れた応答性を備えています。

一方で、永久磁石を使用しないため無通電時の保持トルクがなく、発生トルクもPM型やHB型と比較して小さくなります。また、保持力を得るためには通電を継続する必要があるため、消費電力が大きくなる傾向があります。

そのため近年では、高分解能と高トルクを両立できるハイブリッド(HB)型への置き換えが進んでおり、VR型が採用されるケースは限定的になっています。

ハイブリッド(HB)型ステッピングモータ

HB型(Hybrid)は、PM型とVR型の特長を組み合わせたステッピングモータです。ロータ内部に永久磁石を配置し、その両側に歯車状の鉄心を組み合わせた構造を採用しています。また、鉄心の歯を半ピッチずらして配置するとともに、ステータにも歯を設けることで、高い分解能を実現しています。

ステップ角は一般的に1.8°や0.9°と小さく、3種類の中でも特に高い分解能を備えているため、精密な位置決めが可能です。また、磁気回路の効率が高く、同サイズのPM型やVR型と比較して大きなトルクを生み出せるのも特長です。

一方、構造が複雑なため、価格は比較的高く、サイズや重量も大きくなる傾向があります。しかし、高分解能と高トルクを両立できることから、現在では産業用ステッピングモータの主流となっています。3Dプリンタ、CNC工作機械、ピックアンドプレース装置、半導体製造装置など、高い位置決め精度が求められる産業機器で広く採用されています。

 

比較表

 

PM

VR

HB

分解能

★★

★★★

トルク

★★

★★★

価格

★★★

★★

 

ステッピングモータの駆動方式と励磁方式

ステッピングモータは、駆動方式や励磁方式によって分解能やトルク、振動特性が変化します。そのため、モータの種類を選定するのと同様に、用途に適した駆動方式・励磁方式を選ぶことも重要です。

駆動方式

駆動方式とは、モータのコイルへどのように電流を流すかを定めた方式です。

ユニポーラ駆動

ユニポーラ駆動は、コイルに対して常に一定方向の電流を流す駆動方式です。回路構成がシンプルなため、制御しやすく低コストで実装できるのが特長です。

一方で、コイルの一部しか使用しないため、バイポーラ駆動と比べて発生トルクが小さくなる傾向があります。そのため、高トルクを必要としない用途に適しています。

バイポーラ駆動

バイポーラ駆動は、コイル全体を使用しながら電流の向きを正方向と逆方向に切り替えて駆動する方式です。コイルを効率よく利用できるため、高いトルクを得やすいのが特長です。

また、マイクロステップ駆動(後述)との相性が良く、高精度な位置決めや滑らかな回転を実現できます。そのため、現在では産業用途向けステッピングモータで広く採用されています。

励磁方式

励磁方式とは、各コイルをどのような順序で励磁し、ロータを回転させるかを定めた方式です。

フルステップ駆動

フルステップ駆動には、1相励磁と2相励磁の2種類があります。

1相励磁では、常に1相のコイルのみに通電してロータを回転させます。消費電力を抑えられる一方、発生トルクは比較的小さくなります。

2相励磁では、常に2相のコイルへ同時に通電するため、1相励磁よりも大きなトルクを得ることができます。ただし、その分消費電力は増加します。

いずれも1ステップごとに一定角度で回転するため制御が比較的容易ですが、ハーフステップ駆動やマイクロステップ駆動と比べると、振動や騒音が発生しやすい傾向があります

ハーフステップ駆動

ハーフステップ駆動(1-2相励磁)は、1相励磁と2相励磁を交互に切り替えることで、本来のステップ角の半分ずつロータを回転させる励磁方式です。フルステップ駆動と比較して分解能が2倍となるため、より滑らかな回転と細かな位置決めが可能になります。

一方で、1相励磁と2相励磁を切り替える際にトルク脈動が発生するほか、制御もやや複雑になります。

マイクロステップ駆動

マイクロステップ駆動は、コイルへの通電を単純なON/OFFで切り替えるのではなく、電流値を連続的または段階的に制御することで、本来のステップ位置の間にもロータを停止させる励磁方式です。

これにより、モータの物理構造を変更することなく分解能を向上させることができ、振動や騒音の低減、より滑らかな回転の実現が可能になります。一般的な分割数には、1/4、1/8、1/16、1/32ステップなどがあります。

一方で、電流を高精度に制御する必要があるため、ドライバ回路が複雑になり、システムコストが高くなる傾向があります。また、分解能は向上するものの、実際の位置決め精度が分割数に比例して向上するわけではない点にも注意が必要です。

ステッピングモータの主な用途

ステッピングモータは、パルス信号に応じて回転角度や回転量を制御できることから、位置決めや定量送りが求められる幅広い機器で使用されています。

製造装置・FA(ファクトリーオートメーション)

CNCフライス盤・旋盤:軸位置決め、工具ヘッド移動
3Dプリンタ(FDM/FFF):エクストルーダへのフィラメント供給、X・Y・Z軸の制御
ピックアンドプレース装置:プリント基板(PCB)組立ラインにおける部品位置決め
包装機械:ラベル貼付、コンベアのインデックス送り、充填量制御

医療機器・分析機器

シリンジポンプ・輸液ポンプ:薬液や試薬の高精度送液
自動ピペッティングシステム:臨床分析装置におけるサンプル処理
医療用画像診断装置CTやMRIにおける位置決め機構の駆動

民生機器

インクジェットプリンタ・レーザープリンタ:用紙搬送およびプリントヘッド位置制御
ドキュメントスキャナ:センサユニットおよび原稿搬送機構の駆動
カメラシステム:オートフォーカス機構およびPTZ(パン・チルト・ズーム)制御

ロボティクス・搬送機器

産業用ロボット・サービスロボット:関節部およびエンドエフェクタの位置決め
無人搬送車(AGV)・自律移動ロボット(AMR):操舵機構およびアクチュエータの位置制御
望遠鏡・アンテナ位置決め装置:高精度な角度制御および追尾制御

まとめ

ステッピングモータは、パルス信号に応じて一定角度ずつ回転するモータであり、位置や回転量を制御しやすいことが特長です。製造装置、医療機器、ロボティクスなど幅広い機器で使用されています。

ステッピングモータにはPM型、VR型、HB型の3種類があり、それぞれ分解能やトルク、コストに特長があります。また、駆動方式や励磁方式の選択によっても、分解能やトルク、振動特性などの性能は大きく変化します。

用途に応じてモータのタイプや制御方式を適切に選定することで、求められる性能に応じた最適なモーション制御を実現できます。

マブチモーターグループでは、幅広い用途に対応可能なステッピングモータを取り揃えています。お客様の用途や要求仕様に応じて最適な製品をご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

製品ページ:
https://solution.mabuchi-motor.com/products/stepper-motors

FAQs

ステッピングモータは連続運転可能ですか?

可能です。ただ、ステッピングモータは連続運転に対応してはいますが、本来は正確な位置決め制御を得意とするモータです。そのため、連続回転を主目的とする用途では、発熱の増加やエネルギー効率の低下が課題となる場合があります。長時間の中高速連続運転が求められる用途では、一般的にブラシレスDC(BLDC)モータが採用されます。

オープンループ制御で脱調を防ぐためのポイントはありますか?

脱調を防ぐためには、必要トルクに対して十分な余裕を持ってモータを選定することが重要です。一般的には、必要トルクの2~2.5倍程度の余裕を確保することが推奨されています。また、急激な加減速を避けて適切な加減速制御を行うことや、マイクロステップ駆動を採用して振動や共振を低減することも有効です。さらに、高い信頼性が求められる用途では、エンコーダを使用したクローズドループ制御を検討する方法もあります。

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