
モータ性能線図の見方を解説!
この記事では、モータ性能線図の見方について解説します。
性能線図はT₋N特性図やN-T特性図と呼ばれることもあり、トルク・回転数・電流の関係を表したものです。
一見とっつきにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的な見方さえわかれば、モータの特性を視覚的に把握できる便利なツールです。
実際にブラシレスモータの性能線図を見ながら、押さえるべきポイントを確認していきましょう。
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- 1.性能線図の用語を解説
- 2.性能線図の見方を解説
- 3.注意点
- 3.1.連続使用範囲について
- 3.2.使用電圧について
- 4.(参考)ブラシ付モータの性能線図について
- 5.まとめ
性能線図の用語を解説
上図は、ブラシレスモータ「IS-74BZA」を定格電圧24Vで使用した際の性能線図に色付けしたものです。
ここでは、性能線図を読み取る上で重要な用語となる「T-N特性(線)」、「T-I特性(線)」について解説します。
※「トルク」や「回転数」等の基本性能用語については、こちらの記事で解説しています。
T-N特性(線)
T-N特性(線)とは、「トルク」と「そのトルク時に発揮できる回転数」の関係を表した線であり、T-Nカーブと呼ばれることもあります。
トルクと回転数は反比例の関係にあるため、右肩下がりの線になります。
線の右端がトルク0.9Nmのポイントで途切れていますが、これはモータが0.9Nm(瞬時最大トルク)までトルクを出せることを表しています。
また、トルクが0の状態における最高回転数を無負荷回転数と呼ぶので、併せて押さえておきましょう。
T-I特性(線)
T-I特性(線)とは、無負荷(トルク0)状態から瞬時最大トルクまでのモータに流れる電流値を表した線であり、T-Iカーブと呼ばれることもあります。
トルクと電流は比例関係にあるため、右肩上がりの線になります。
なお、T-I特性線の傾きをトルク定数 [Nm/A] と呼び、トルクと電流の関係は以下の式で表されます。
計算式:トルク T [ Nm ] = トルク定数 [ Nm/A ] × 電流 I [ A ]
理論上は無負荷時の電流値は0となりますが、実際には鉄損や機械損によって微弱な電流が流れるため、性能線図における無負荷電流値は0よりわずかに大きい値となります。
性能線図の見方を解説
ここでは引き続き「IS-74BZA」の性能線図を用いて、見方について解説します。
トルク・回転数・電流のいずれか一つの数値が分かれば、他の二つの数値も読み取ることが可能です。
例えば、モータにトルク 0.5Nm の負荷が発生する場合、回転数と電流値を読み取る手順は以下の通りとなります。
▼読み取り方(トルク0.5Nmが発生する場合)
- 横軸 トルク T の値が 0.5Nm の点を見つける
- T-N特性線上で、トルク 0.5Nm に対応する縦軸 回転数 N の値を見ると、約3,400r/min であることがわかる
- T-I特性線上で、トルク 0.5Nm に対応する縦軸 電流 I の値を見ると、約8A の電流が必要となることがわかる
なお、出力を求めたい場合は、以下の式に当てはめれば計算可能です。
計算式:2π × トルク T [ 0.5Nm ] × 回転数 N [ 3,400r/min ] ÷ 60 ≒ 出力 P [ 178W ]
この際の出力は約178Wであることが分かります。
※ トルク・回転数・出力の関係性については、こちらの記事で解説しています
上の例では、トルク値から回転数と電流の値を読み取りましたが、電流や回転数を起点にその他の値を読み取ることも可能です。例えば「電流を8A以下に抑えたい」場合、「最大で約0.5Nmのトルクを発揮でき、その際の最高回転数は約3,400r/minになる」という見方もできます。
注意点
連続使用範囲について
モータは、トルクの増加に伴う銅損*、回転数の増加に伴う鉄損*、摩擦や空気抵抗により生じる機械損が原因で発熱し、ある一定の温度を超えると安全かつ安定的な駆動に影響が生じます。
そのため、トルク及び回転数については連続駆動範囲(下図にて水色の範囲で表している部分)が定められています。
* 銅損:コイル巻線部の電気抵抗により、電流が熱として消費される電力損失
* 鉄損:鉄心部の磁界が変化することにより、磁気及び渦電流が熱として消費される電力損失
例えばこのモータを トルク 0.65 Nmの負荷で連続駆動させる場合、以下のポイントに留意する必要あります。
▼留意すべきポイント(トルク0.65Nmで連続駆動させる場合)
- 横軸 トルク T の値が 0.65Nm の際、連続駆動範囲内において縦軸 回転数 N の値が最大化する点を見つける
- 縦軸 回転数 N の値を見ると、連続駆動時は 1,600r/min 以内に抑える必要があることがわかる(それに伴い、モータに印加する電圧も下げる必要がある)
連続駆動範囲を超えるトルク及び回転数で長時間使用し続けると、故障やトラブルにつながる恐れがあるため注意しましょう。
使用電圧について
モータは連続的かつ安全に運転するために定格電圧での使用を前提として設計されており、基本的に性能線図は定格電圧で駆動した際の数値を表したものとなっています。
印加する電圧が変われば、電流・トルク・回転数の値もそれぞれ変わるため、モータに印加している電圧値と見ている性能線図の電圧値にズレが無いか注意しましょう。
(参考)ブラシ付モータの性能線図について
ブラシ付モータの性能線図には、出力や効率が記載されていたり、拘束トルク[ Ts ]、拘束電流[ Is ]といった用語が登場したりと、ブラシレスモータの性能線図と異なる部分もありますが、基本的な見方については変わりません。
拘束トルク[ Ts ]とは、負荷が増大してモータの回転が停止、すなわち拘束(Stall)時のトルクであり、そのモータが出せる最大トルクを表しています。また、その際の電流値を拘束電流[ Is ]と呼びます。なお、ブラシレスモータに関しては、制御コントローラの基盤を保護するため、拘束トルクに達するほど大きな電流を流せない設計になっていることが多く、基本的にブラシレスモータの性能線図には拘束トルクや拘束電流は記載されておりません。
また、出力や効率*については、トルク・回転数・電流・電圧の数値から計算して求めることも可能なため、出力線や効率線は省略されることもあります。
* 正確な効率(%)を求めるためには電力計を用いる必要があるため、性能線図における効率の線はあくまで目安としてご活用ください
まとめ
本記事では、モータ性能線図の見方について解説しました。モータの特性を把握し、用途に適した機種を選定するためには、性能線図が非常に役に立ちます。
マブチモーターでは、多様な用途に対応するブラシレスモータのラインナップを取り揃えています。各機種ページには、性能表と併せて性能線図も掲載しておりますので、皆様のものづくりにぜひご活用ください。
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